目次を見る(11項目)
プレシード投資とは?シード投資との違いと調達の進め方をVCが解説


「」
プレシード投資とは、創業前後のアイデア段階のスタートアップへ行う最初の出資です。日本では数百万円〜数千万円規模が中心で、エンジェルやプレシード特化VCが、創業者と課題の質に賭けます。
プレシード投資とは?まず結論から
プレシード投資とは、創業前後のアイデア段階にあるスタートアップへ、最も早いタイミングで行われる出資のことです。プロダクトがまだ形になっていない段階で、投資家は事業の実績よりも「創業者」と「課題の筋の良さ」に賭けます。日本では数百万円〜数千万円規模が中心で、エンジェル投資家やプレシード特化のベンチャーキャピタル(VC)が主な出し手です。
この記事では、プレシード投資の定義、シード投資との違い、調達手段、VCが見るポイント、実際の調達プロセス、やりがちな失敗までを、投資する側(VC)の視点で解説します。
プレシード投資とシード投資の違いは?
プレシードとシードの一番の違いは、事業がどこまで進んでいるかです。プレシードは「アイデア・構想」の段階、シードは「試作品(MVP)ができて顧客の反応を検証している」段階を指します。段階が進むほど調達額のレンジは大きくなり、投資家に占めるVCの割合も増えていきます。
次の表に主な違いをまとめます。金額は日本市場でよく見られる一般的な目安であり、事業内容や創業者の実績によって大きく変わります。
| 項目 | プレシード | シード |
|---|---|---|
| 事業の段階 | アイデア・構想段階。プロダクトは未完成、または検証前 | 試作品(MVP)があり、顧客ニーズを検証中 |
| 調達額の目安 | 数百万円〜数千万円 | 3,000万円〜1.5億円程度 |
| 主な投資家 | エンジェル投資家、プレシード特化VC | ベンチャーキャピタル(VC)が中心 |
| 投資家が見るもの | 創業者・課題の質・市場の大きさ | 左記+初期の顧客反応・成長の兆し |
| 資金の主な使途 | プロダクト開発・PoC・チーム組成 | 本格的な市場開拓・組織づくり |
調達額の目安は、プレシードで数百万円〜数千万円(マネーフォワード クラウド会社設立)、シードで3,000万円〜1.5億円程度が公知のレンジとして語られます。参考として、あるまとめでは2024年上半期のシード調達額は平均約1.1億円・中央値約4,000万円と紹介されています(StartupList)。あくまで幅のある目安として捉えてください。シードの調達額の考え方はシードラウンドの調達額はどれくらい?、シード期の全体像はシード期での投資とは?起業家のためのガイドでも詳しく解説しています。
プレシードの資金調達手段にはどんなものがある?
プレシード期の資金の集め方は、大きく4つに分けられます。
エンジェル投資家
個人の資産で投資する人を指します。元起業家や経営者が多く、資金だけでなく人脈や助言も期待できます。意思決定が速く、アイデア段階でも動いてくれるのが強みです。
プレシード特化のVC
ファンドの資金を使い、プレシード〜シードに集中して投資するVCです。継続的な支援や次のラウンドへの橋渡し、投資先どうしのつながりが得られます。プレシードで投資するTHE SEEDでは、京都本社で学生起業したFiTへの創業投資や投資先コミュニティの運営などを行い、創業を後押ししています。
補助金・助成金
国や自治体が出す返済不要の資金です。株式を渡さずに済む一方、採択審査や報告義務があり、入金までに時間がかかる点に注意します。事業計画づくりの良い練習にもなります。
ビジネスコンテスト・アクセラレーター
賞金や出資、メンタリングを受けられるプログラムです。採択実績は、後の資金調達で信用の裏づけになることがあります。
プレシードでは、株価(バリュエーション)を確定させずに素早く調達できる契約の型もよく使われます。代表的なのがJ-KISSとSAFEです。
- J-KISS: 米国の「KISS」を日本向けにしたコンバーティブル型の新株予約権。VCのCoral Capital(旧500 Startups Japan)が2016年に契約書式を無償公開したことで広まりました(J-KISSの解説)。今は株価を決めず、次の資金調達(シリーズA等)で株式に転換する仕組みです。
- SAFE: 米国のアクセラレーターY Combinatorが考案した「将来の株式を約束する」簡易な契約。J-KISSと考え方は近く、素早い調達に向きます。
どちらも将来の転換条件(キャップやディスカウント)が後の持ち分に効いてくるため、条件面は必ず専門家に確認してください。調達手段の全体像は学生起業家向け!シードVC・エンジェル投資家から資金調達を成功させるガイドも参考になります。
プレシードVCは何を見て投資を決めるのか
プレシードでは、数字の実績がほとんどありません。そのため一般に、プレシードVCの立場では次の4点を重視します。
- 創業者そのもの: 課題への当事者性、学ぶ速さ、やり抜く力。誰が挑むのかを最も重く見ます。
- 課題の質: 解こうとしている課題が本当に深く、多くの人が困っているか。課題の解像度が高いかを問います。
- 市場の大きさ: 成功したとき、事業が十分に大きくなれる市場か。伸びしろを評価します。
- タイミング: なぜ「今」なのか。技術・制度・行動の変化という追い風があるかを見ます。
プレシードVCの立場では、完成した事業計画よりも「この創業者がこの課題に取り組む必然性」を確かめようとします。VCが実際に見ているポイントは事業計画書、VCは本当はどこを見ているか、投資家の役割はシード期の投資家・VCの役割とは?選び方・出会い方で掘り下げています。
プレシード投資の調達プロセスと期間感
調達の流れは、おおむね次のように進みます。
1. コンタクト: 紹介やイベント、応募フォームで投資家に接触します。信頼できる人からの紹介は通りやすい傾向があります。
2. 初回面談: 事業と創業者を伝える最初の場です。ピッチ資料の質がここで効きます(VCに刺さるピッチ資料の要素)。
3. 検討・追加面談: 投資委員会での議論や、深掘りの面談が行われます。
4. 条件提示(タームシート): 投資額・バリュエーション・条件をまとめた書面が提示されます。内容はタームシートとは?を読んでから合意しましょう。
5. 契約・入金: 契約書を締結し、資金が振り込まれます。
期間は投資家や案件により幅がありますが、初回接触から着金までおおむね1〜3か月が一つの目安です。エンジェルや型化された契約(J-KISS等)では、より短くなることもあります。急ぐほど条件を詰め切れないリスクもあるため、余裕を持った資金計画が大切です。
プレシードでやりがちな失敗
最後に、プレシードで起こりやすい失敗を3つ挙げます。
- 株を渡しすぎる(希薄化): 目先の資金欲しさに持ち分を手放しすぎると、次のラウンドで身動きが取れなくなります。初回で創業者の持ち分を大きく削らない設計が重要です。
- バリュエーションの背伸び: 高すぎる評価額で調達すると、次のラウンドで評価が下がる「ダウンラウンド」を招きやすくなります。実力に見合った水準を選びます。
- 投資家選びの失敗: 金額や評価額だけで決め、支援内容や相性を見ないと後悔します。長い付き合いになる相手として、投資家を選ぶ視点が欠かせません(プレシード・シードで投資するVCの視点:投資家選び)。
これらの失敗は、いずれも「今回の調達」だけを見て「次の調達」を考えていないことが原因になりがちです。プレシードは一度きりではなく、シード・シリーズAへと続く長い資本政策の入口です。最初の一歩で持ち分や評価額を無理に動かすと、その後のラウンド全体に響きます。目先の金額よりも、次につながる調達かどうかで判断してください。
まとめ
プレシード投資は、アイデア段階のスタートアップに対する最初の出資です。ポイントを整理します。
- 段階はプレシード=アイデア、シード=MVP検証。調達額の目安は数百万円〜数千万円。
- 調達手段はエンジェル・VC・補助金・コンテストなど複数ある。
- プレシードVCは、創業者・課題の質・市場・タイミングを重視する。
- 失敗しやすいのは、希薄化・バリュエーションの背伸び・投資家選び。
関西でプレシード調達を考えるなら、まずは地域の資金調達環境を押さえておくと動きやすくなります。関西で起業する人のための資金調達ガイド2026や関西でのシード資金調達環境、投資家の動きもあわせてご覧ください。アイデア段階でも、まず身近な投資家やコミュニティに話してみることから始めてみてください。
よくある質問
プレシード投資とシード投資の違いは?
事業の段階が違います。プレシードはアイデア・構想段階、シードは試作品(MVP)で顧客ニーズを検証する段階を指します。調達額の目安はプレシードが数百万円〜数千万円、シードが3,000万円〜1.5億円程度で、投資家はプレシードがエンジェル中心、シードはVC中心に移ります。
プレシードではいくら調達できますか?
日本市場では数百万円〜数千万円が一般的な目安です。ただし事業内容・市場・創業者の実績で大きく変わります。プレシードは実績が乏しいため、無理に大きく調達するより、次の資金調達までの資金(ランウェイ)を確保できる額を見極めることが重要です。
プレシードVCは何を見て投資を決めますか?
一般にプレシードVCは、創業者そのもの、課題の質、市場の大きさ、タイミングの4点を重視します。プロダクトの実績がまだ乏しいため、完成した事業計画よりも「この創業者がこの課題に取り組む必然性」を確かめようとする傾向があります。
J-KISSやSAFEとは何ですか?
どちらも株価(バリュエーション)を確定させずに素早く調達するための契約の型です。J-KISSはCoral Capitalが2016年に日本向け書式を無償公開したコンバーティブル型の新株予約権、SAFEは米Y Combinator考案の「将来の株式を約束する」簡易契約です。転換条件が後の持ち分に影響するため専門家への確認が必要です。

