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財務・会計

タームシートとは?初めて提示されたときに読むべきポイントをVCが解説

スタートアップ関西 運営
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公開 2026.07.10 · 読了 10分
タームシートとは?初めて提示されたときに読むべきポイントをVCが解説
専門家のひとこと

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結論

タームシートとは、VCが提示する出資条件の要点をまとめた書面です。全体は原則として法的拘束力を持ちませんが、独占交渉権や秘密保持など一部条項に拘束力を持たせる場合があります。

起業家がVCから出資を打診されると、最初に受け取る書面が「タームシート」です。バリュエーション(企業価値評価)だけを見て安心してしまう人が少なくありませんが、実際に会社の将来を左右するのは、その裏にある清算優先権や株式の種類、希薄化防止といった条項です。

この記事では、投資する側(VC)の視点から、タームシートの定義と法的拘束力、書かれている主要項目、初めて受け取ったときに最初に見るべきポイント、条項ごとの読み方、そしてサインまでの進め方を解説します。専門用語には短い説明を添えているので、初めての方でも読み進められます。

タームシートとは?法的拘束力はある?

タームシートとは、VCが提示する出資(投資)の主要な条件をまとめた書面です。バリュエーション、調達額、株式の種類、投資後の権利などの要点を1〜数ページに整理し、本契約(投資契約書)を結ぶ前に「大枠でこの条件で合意できるか」を確認するために使われます。英語ではTerm Sheet、日本語で「条件規定書」「基本合意書」などと呼ばれることもあります。

法的拘束力については、タームシート全体は原則として法的拘束力を持たないものとして扱われるのが一般的です。あくまで最終条件を確定させる前の合意メモという位置づけです。ただし、秘密保持や独占交渉権(一定期間、他の投資家と交渉しない約束)のように、一部の条項に限って拘束力を持たせる場合があります。どの条項に拘束力を持たせるかは案件ごとに異なるため、文面で必ず確認すべきポイントです。

つまり「サインしても最終契約ではないから安心」とは言い切れません。独占交渉権にサインした瞬間、その期間は他のVCと本格的な交渉ができなくなります。文面に「本タームシートは法的拘束力を有しない。ただし第○条(独占交渉権)および第○条(秘密保持)を除く」といった記載があるか、必ず確認してください。

タームシートに書かれている主要項目

タームシートに登場する主要な項目を一覧にまとめました。案件によって項目の増減はありますが、シード〜アーリー期でよく出てくるものは次のとおりです。

項目 何を決める条項か 一言メモ
バリュエーション 出資前後の企業価値評価(プレ/ポスト) 調達額と合わせて放出株式比率が決まる
調達額 今回のラウンドで調達する総額 誰がいくら入れるかも記載されることが多い
株式の種類 普通株か優先株(種類株)か 優先株には後述の優先的な権利が付く
清算優先権 会社売却・清算時に投資家が優先して回収する権利 「1倍」「参加型/非参加型」に注目
希薄化防止 次回が安い価格(ダウンラウンド)の場合の投資家保護 加重平均型かフルラチェット型か
取締役・オブザーバー 投資家が取締役やオブザーバーを送る権利 議決権を持つ取締役か、傍聴のみか
ドラッグアロング 一定多数が売却に賛成した際、他株主も売却に応じる義務 M&A(会社売却)を進めやすくする条項
タグアロング 大株主が売る際、少数株主も同条件で売れる権利 少数株主の保護側の条項
ベスティング 創業者株式が時間をかけて確定する仕組み 早期退任時の株式の扱いに影響
プロラタ 次回ラウンドで持株比率を維持して追加出資できる権利 既存投資家の追加投資枠
独占交渉権 一定期間、他の投資家と交渉しない約束 拘束力を持つことが多い

これらの用語は初めて見ると圧倒されますが、すべてを同じ重みで読む必要はありません。次に、最初に見るべき順番を示します。

最初に見るべき3項目

初めてタームシートを受け取ったとき、多くの起業家はバリュエーションと調達額だけを見て一喜一憂します。しかしVCの視点では、バリュエーションは氷山の一角です。最初に確認してほしいのは次の3つです。

1. 株式の種類(普通株か優先株か)

まず、今回の出資が普通株か優先株(種類株式)かを確認します。優先株には清算優先権や希薄化防止など、普通株にはない権利が付くのが一般的です。同じバリュエーションでも、付いている権利しだいで条件の重さはまったく変わります。

2. 清算優先権の中身

次に清算優先権です。会社を売却したときに、投資家がいくら優先して回収できるかを決める条項で、創業者の手取りに直結します。「何倍か」「参加型か非参加型か」を必ず読みます。詳しくは後述します。

3. 希薄化の実質

3つ目は希薄化(自分の持株比率がどれだけ下がるか)の実質です。表面のバリュエーションだけでなく、新株予約権(ストックオプション)プールを今回どれだけ確保するか、その負担を誰が負うかで、創業者の実質的な希薄化は変わります。バリュエーションが高くても、大きなオプションプールを今回の株主割当前に作る条件なら、実質的な希薄化は見た目より大きくなります。

この3項目を押さえると、「高いバリュエーションだが条件が重い」オファーと、「バリュエーションは控えめだが条件がシンプル」なオファーを、同じ土俵で比較できるようになります。

条項別の読み方

ここからは主要条項について、何のための条項か・起業家に不利になりうるパターン・交渉余地の一般論を順に見ていきます。実際の落としどころは案件により異なるため、一般論として捉えてください。

清算優先権

清算優先権は、会社の売却や清算の際に、投資家が投資額を優先的に回収できる権利です。投資家がダウンサイド(うまくいかなかった場合)のリスクを抑えるための条項です。

注目点は倍率と「参加型か非参加型か」です。倍率は投資額の1倍が標準的で、2倍・3倍と高くなるほど投資家有利になります。非参加型は「優先回収か、持株比率での分配か、有利な方を選ぶ」形で、参加型は「優先回収したうえで、残りも持株比率で分配を受ける(二重取り)」形です。一般には1倍・非参加型が起業家にとって穏当とされ、シード期ではここが交渉の起点になることが多いです。倍率や参加型の有無は交渉余地がある論点です。

希薄化防止条項

希薄化防止(アンチダイリューション)は、次回ラウンドが今回より安い価格(ダウンラウンド)になった場合に、既存投資家の1株あたりの価値を一定程度守る条項です。

方式には主に「加重平均型」と「フルラチェット型」があります。フルラチェット型は、次回価格まで既存投資家の取得価格を引き下げる強い保護で、創業者の希薄化が大きくなりやすく、一般には投資家にかなり有利とされます。加重平均型は調達規模を加味して調整する穏当な方式です。加重平均型(ブロードベース)が広く使われる標準で、フルラチェットを提示された場合は交渉の対象になりやすい論点です。

取締役・オブザーバー

この条項は、投資家が取締役を送るか、オブザーバー(議決権のない傍聴者)として関与するかを決めます。ガバナンス(会社の意思決定の仕組み)に直接影響します。

議決権を持つ取締役の指名権を渡すと、重要事項の決定に投資家の同意が必要になります。シード期では、まずはオブザーバー枠にとどめる、あるいは取締役会をまだ設置しないケースもあります。何人分の席を、どの条件で渡すかは案件により異なり、交渉の対象になります。

ドラッグアロング

ドラッグアロング(強制売却権)は、一定割合以上の株主が会社売却に賛成した場合、反対する株主も同じ条件で売却に応じる義務を負う条項です。少数株主の反対でM&Aが止まるのを防ぎ、出口(イグジット)を進めやすくする狙いがあります。

起業家側の注意点は、発動に必要な賛成の割合と、創業者自身がその多数に含まれるかです。創業者の意思と無関係に売却が進みうる設計だと不利になりえます。発動条件(必要な議決権割合、価格の下限など)は交渉の対象になることがあります。

ベスティング

ベスティングは、創業者や主要メンバーの株式が、在籍期間に応じて段階的に確定していく仕組みです。共同創業者が早期に離脱したとき、大量の株式を持ったまま去るのを防ぎ、残るメンバーと投資家を守る狙いがあります。

期間や設計は案件により異なりますが、数年かけて確定し、最初の一定期間(クリフ)を過ぎるまでは確定しない、という形が国内外で広く見られます。すでに長く事業を続けている創業者の場合、これまでの貢献分を確定済みとして扱えるかが論点になります。

独占交渉権

独占交渉権(ノーショップ)は、一定期間、起業家が他の投資家と並行して交渉しないことを約束する条項です。VCがデューデリジェンス(投資前の調査)に時間と費用をかける前提として求めるのが一般的で、前述のとおり拘束力を持たせることが多い条項です。

注意点は期間の長さです。期間が長すぎると、条件がまとまらなかったときに他の選択肢を探し直す時間を失います。一般には数十日程度に収める例が多く、期間は交渉の対象になります。

受け取ってからサインまでの進め方

初めてタームシートを受け取ったら、次の順序で進めるのが安全です。焦ってその場でサインする必要はありません。

  • その場でサインしない: 独占交渉権など拘束力のある条項が含まれることがあります。まず持ち帰り、内容を確認する時間をもらいます。
  • 不明点を質問する: 各条項について「これは何のための条項か」「なぜこの水準か」を投資家に率直に聞きます。良い投資家は説明を惜しみません。聞き方に迷う項目は、この記事の一覧表を手元に置いて一つずつ確認するとよいでしょう。
  • 専門家に相談する: スタートアップの資金調達に詳しい弁護士に、少なくとも一度は目を通してもらうことを強くおすすめします。清算優先権・希薄化防止・ガバナンス条項は、後戻りが難しい論点です。
  • 複数のオファーを同じ基準で比較する: 複数のVCから提示があるなら、バリュエーションだけでなく「株式の種類・清算優先権・希薄化・ガバナンス」を並べて比較します。金額の大小だけで決めないのが要点です。
  • 条件だけでなく相手も見る: 投資家は数年単位で付き合う相手です。条件の交渉姿勢そのものが、その後の関係を映すこともあります。投資家の選び方はシード期の投資家・VCの役割とは?選び方・出会い方も参考にしてください。

確認質問は遠慮する必要はありません。むしろ条項の意図を的確に質問できる起業家は、投資家からも「事業を任せられる」と受け取られやすいものです。

まとめ

タームシートは、VCからの出資条件の要点をまとめた書面で、全体は原則として法的拘束力を持たないものの、独占交渉権や秘密保持など一部条項に拘束力を持たせる場合があります。読むときの要点を整理します。

  • バリュエーションだけで判断しない。株式の種類・清算優先権・希薄化の実質をまず見る
  • 清算優先権は「倍率」と「参加型/非参加型」、希薄化防止は「加重平均型かフルラチェットか」に注目
  • その場でサインせず、質問し、弁護士に相談し、複数オファーを同じ基準で比較する

条項の意味を理解したうえで、幅を持って交渉に臨むことが、初めての資金調達を良い形で進める第一歩です。VCが事業計画や交渉の場でどこを見ているかは、事業計画書、VCは本当はどこを見ているかプレシード投資とは?シード投資との違いも合わせて読むと、投資家側の視点がつかめます。

スタートアップ関西では、関西で起業を目指す方に向けて資金調達の実務情報を発信しています。この記事が、タームシートを前に迷ったときの判断材料の一つになれば幸いです。

よくある質問

タームシートとは何ですか?

タームシートとは、VCが提示する出資(投資)の主要な条件をまとめた書面です。バリュエーション、調達額、株式の種類、投資家の権利などの要点を整理し、本契約である投資契約書を結ぶ前に、大枠の条件で合意できるかを確認するために使われます。条件規定書と呼ばれることもあります。

タームシートに法的拘束力はありますか?

全体としては原則として法的拘束力を持たないものとして扱われるのが一般的です。ただし独占交渉権や秘密保持といった一部の条項には拘束力を持たせるのが通例です。サイン前に、どの条項が拘束力を持つのか文面で必ず確認してください。

タームシートで最初に見るべき項目はどれですか?

バリュエーションだけでなく、株式の種類(普通株か優先株か)、清算優先権の中身(倍率・参加型か非参加型か)、希薄化の実質の3つをまず確認します。これらを押さえると、条件の重さを含めて複数のオファーを同じ基準で比較できます。

サインする前に弁護士に相談すべきですか?

強くおすすめします。清算優先権・希薄化防止・ガバナンス条項は後から修正が難しい論点です。スタートアップの資金調達に詳しい弁護士に少なくとも一度は目を通してもらい、不明点は投資家にも率直に質問したうえで判断するのが安全です。

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