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事業計画書、VCは本当はどこを見ているか — プレシード・シード期の評価軸


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プレシード・シード期のVCは、事業計画の精緻さより「課題の質・なぜあなたか・市場の大きさ」を見ます。完璧な5カ年収支計画は不要で、前提が語れることと一次情報の有無が評価を分けます。
結論: VCは計画の精緻さより「課題・創業者・市場」を見る
事業計画書を前にした起業家の多くが、精緻な5カ年収支計画づくりに時間を費やします。しかしプレシード・シード期のVCが最初に見るのは、そこではありません。見ているのは「解こうとしている課題の質」「なぜあなたがそれをやるのか」「市場がどれだけ大きくなりうるか」の3点です。
この記事では、プレシードVCの立場から、事業計画書のどこを・どの順番で見るのか、数値計画で最低限押さえるべき点、そして近年増えている「AIで作った事業計画書」がどう見られるのかまでを、投資する側の視点で整理します。テンプレートを埋める前に読んでおくと、伝わる計画書に近づきます。
よくある2つの誤解
事業計画書について、起業家がつまずきやすい誤解が2つあります。
誤解1: 完璧な5カ年収支計画が求められている
プレシード・シード期は、事業がまだ「仮説の塊」の段階です。売上が立つ前、あるいは立ち始めたばかりの時期に、5年後の月次売上を1円単位まで積み上げても、その数字が当たる確率はほぼゼロです。VCもそれを分かっています。
見られているのは数字の精度ではなく、「その数字にたどり着くまでの思考の筋道」です。なぜこの単価なのか、なぜこの成長率を置いたのか。前提が説明できれば、数字が荒くても問題ありません。逆に、根拠のない右肩上がりのグラフは、思考の浅さの証拠として逆効果になります。
誤解2: テンプレートを埋めれば伝わる
金融機関や公的支援機関のテンプレートは、融資審査や書類の網羅性のために設計されています。項目を埋めること自体が目的になりがちで、埋めても「この事業に賭ける理由」は伝わりません。
VCが読みたいのは、様式の穴埋めではなくあなた自身の言葉で語られた仮説と確信です。テンプレートは骨組みとして使いつつ、中身は自分の観察と一次情報で満たす必要があります。
VCが見る順番と評価軸
プレシードVCが事業計画書やピッチ資料を読むとき、意識的にせよ無意識にせよ、おおむね次の順番で見ていきます。一般化したVC視点として、各軸の「良い例」と「弱い例」を並べます。
| 見る順番 | 評価軸 | 良い例 | 弱い例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 課題の質 | 特定の人が本当に困っている具体的な痛み。自分が当事者として観察した | 「不便そう」という一般論。誰がどれだけ困っているか曖昧 |
| 2 | なぜあなたか | その課題に取り組む必然性・原体験・独自の知見や執念 | 流行っているから参入。創業者と事業のつながりが見えない |
| 3 | 市場の大きさ | 今は小さくても伸びる構造。10年後に大きくなりうる説明 | 「巨大市場の1%を取れば」という上からの割り算だけ |
| 4 | 解決策 | 課題に対して筋の良い解き方。なぜ今この方法が可能かの説明 | 技術やアイデアが先で、課題との結びつきが弱い |
| 5 | トラクション | 小さくても本物の需要の証拠。ユーザーの反応・継続・熱量 | 登録数など見栄えの数字だけ。使われている痕跡がない |
| 6 | 数字 | 上記を裏づける整合した計画。前提が語れる | 前提なしの精緻な表。上の5つと切り離されている |
注目すべきは、数字が最後に来るという点です。1〜5がしっかりしていれば、数字はその結論を確かめる材料になります。逆に1〜5が弱いと、どんなに数字を作り込んでも評価は上がりません。
この評価軸は投資家によって力点が変わります。誰がどの観点を重視するかを知るには、プレシード・シードで投資するVCの視点:投資家選びやプレシード投資とは?シード投資との違いもあわせて読んでみてください。
数値計画で最低限押さえるべきもの
精緻な5カ年計画は不要でも、数字がまったくなくてよいわけではありません。プレシード・シード期の数値計画で、VCが確認したい最低限は次の3つです。
1. 資金使途
調達した資金を「何に・いくら使うか」です。人件費・開発費・マーケ費などの内訳が、事業の優先順位と一致しているかを見ます。プロダクト検証が最優先の段階なのに広告費が大きい、といった不整合はすぐに気づかれます。
2. ランウェイ
ランウェイとは、手元資金が尽きるまでの期間のことです。「今回の調達で何カ月もつのか」を明確にします。一般に、シード期は次の調達まで12〜18カ月程度の余裕を持たせる設計が一つの目安とされます。ここが説明できないと、資金計画への信頼が下がります。
3. 次のマイルストーン
この資金で「何を証明するか」です。次の資金調達や事業の次段階に進むために、どの指標をどこまで到達させるのか。ランウェイの期間内に達成できる、具体的で検証可能なマイルストーンを置けているかが問われます。
つまり数値計画の本質は「精度」ではなく、資金使途 → ランウェイ → マイルストーンが一本の線でつながっているかです。調達額の相場感はシードラウンドの調達額はどれくらい?も参考になります。
AIで作った事業計画書はバレる?投資家の本音
近年、生成AIで事業計画書やピッチ資料を作る起業家が急増しました。「AIで作ったとバレたら不利になるのか」という不安をよく聞きます。プレシードVCの立場から、率直な見方を整理します。
AIを使うこと自体は、まったく問題ではない
資料の体裁を整える、文章を推敲する、抜けている観点を洗い出す。こうした用途でAIを使うのは、むしろ効率的で歓迎されます。ツールを使いこなせること自体はマイナスになりません。
分かるのは「思考の痕跡」と「一次情報」の有無
一方で、経験のある投資家は、AIが生成した「それらしいが中身のない計画書」に気づきます。見分けているのは主に次の2点です。
- 思考の痕跡: なぜその結論に至ったのか、迷いや検討の跡があるか。AI任せの文章は、もっともらしい一般論が並ぶ一方で、創業者本人の判断や取捨選択の痕跡が消えがちです。
- 一次情報: 実際に顧客に会って聞いた声、自分で試して分かった事実があるか。AIは一般論やネット上の二次情報は出せますが、あなたが現場で得た固有の情報は出せません。
面談で少し深掘りすれば、資料の裏に本人の思考と一次情報があるかどうかはすぐに分かります。問われるのはAIを使ったかどうかではなく、あなた自身が課題を深く理解しているかです。AIで土台を作るのは構いません。ただし、一次情報と自分の判断で必ず上書きしてください。
提出前チェックリスト
事業計画書やピッチ資料をVCに送る前に、次の観点を確認してください。1つでも「いいえ」があれば、そこが弱点です。
| 観点 | 確認する問い | できているか |
|---|---|---|
| 課題 | 「誰が」「どれだけ」困っているかを具体的に言えるか | ☐ |
| 当事者性 | なぜ自分がこの課題をやるのか、必然性を語れるか | ☐ |
| 一次情報 | 自分で顧客に会って得た事実が入っているか | ☐ |
| 市場 | 今は小さくても伸びる構造を説明できるか | ☐ |
| 解決策 | 課題と解決策が論理的につながっているか | ☐ |
| トラクション | 小さくても本物の需要の証拠を示せているか | ☐ |
| 資金使途 | 調達額の使い道が優先順位と一致しているか | ☐ |
| ランウェイ | 資金が何カ月もつか明確に言えるか | ☐ |
| マイルストーン | 次に何を証明するか具体的に置けているか | ☐ |
| 一貫性 | 課題から数字まで一本の線でつながっているか | ☐ |
このチェックを通すだけで、テンプレート埋めの計画書とは伝わり方が変わります。ピッチ資料そのものの作り方はVCに刺さるピッチ資料の要素で詳しく解説しています。
まとめ
プレシード・シード期のVCが事業計画書で見ているのは、精緻な数字ではありません。課題の質・なぜあなたか・市場の大きさを軸に、それを裏づけるトラクションと一貫した数値計画があるかを見ています。
- 完璧な5カ年収支計画は求められていない。前提が語れることが大事
- テンプレートの穴埋めではなく、自分の言葉と一次情報で満たす
- 数字は最後。課題から数字まで一本の線でつなぐ
- AI利用は問題ではない。思考の痕跡と一次情報で上書きする
- 資金使途・ランウェイ・次のマイルストーンは最低限押さえる
投資家との向き合い方や条件面の基礎を知りたい場合は、タームシートとは?や、関西での資金調達の全体像をまとめた関西で起業する人のための資金調達ガイド2026もあわせてどうぞ。
関西でこれから起業し、シードVCへの資料を準備している方は、スタートアップ関西の関連記事を土台に、まず一次情報の量を増やすところから始めてみてください。事業計画や資金調達について相談したいときは、関西拠点のプレシードVCTHE SEEDのような投資家に、早い段階で壁打ちしてみるのも一つの方法です。
よくある質問
プレシード・シード期でも詳細な5カ年収支計画は必要ですか?
厳密な精度は不要です。事業が仮説段階のこの時期、5年後の月次売上を積み上げても当たる確率は低く、VCも数字の精度は期待していません。見られるのは前提の筋道です。なぜこの単価・成長率なのかを説明できれば、数字が荒くても問題ありません。
VCは事業計画書のどこから読みますか?
一般に、課題の質から読み始めます。次に「なぜあなたがやるのか」、市場の大きさ、解決策、トラクション、そして最後に数字という順番です。数字は結論を確かめる材料で、その前の5つが弱いと数字を作り込んでも評価は上がりません。
AIで作った事業計画書は投資家にバレますか?不利になりますか?
AIを使うこと自体は問題なく、不利にもなりません。ただし、思考の痕跡と一次情報の有無で中身の薄さは見抜かれます。顧客に会って得た事実や自分の判断が入っていれば評価されます。AIで土台を作り、一次情報で必ず上書きしてください。
数値計画で最低限押さえるべき項目は何ですか?
資金使途・ランウェイ・次のマイルストーンの3つです。調達額を何に使うか、資金が何カ月もつか、その期間内に何を証明するか。この3つが一本の線でつながっているかが、精緻さより重視されます。