セッション2:VC代表者セッション「VCの代表に聞く、VCキャリアと資金調達について」


「VCのキャリアや資金調達の裏側を率直に語れる場は、起業家にとってVCの解像度を上げる貴重な機会です。投資家との相互理解が深まることで、より良いパートナーシップが生まれます。」
VCの代表者2名(ニッセイ・キャピタル代表取締役社長の上田宏介氏、THE SEED廣澤太紀)が、VCでのキャリアパスと資金調達のリアルについて語ったセッションです。VCの日常業務、投資判断の基準、起業家に求めるものなど、投資家の視点からスタートアップの資金調達について具体的に解説しました。
シードVC「THE SEED」は、2024年10月19日に「スタートアップ関西 2024 秋」を開催しました。
本記事では、イベントで行われたセッション2:VC代表者セッション「VCの代表に聞く、VCキャリアと資金調達について」の当日の模様をまとめています。VCの代表者お二人から「VCでのキャリア」そして「資金調達について」を余すところなく語っていただきました。
登壇者
**・ニッセイ・キャピタル 代表取締役社長 上田 宏介 氏(※)
・THE SEED General Partner 廣澤 太紀
・モデレーター:THE SEED 中山 陽菜乃**
※記載の役職は、「スタートアップ関西2024」開催当時のものです。
中山:まずお二人の自己紹介からお願いできればと思います。上田さん、廣澤さんの順にお願いいたします。
上田氏:私は現在ニッセイ・キャピタルの代表をしています。私自身は親会社の日本生命で資産運用関係の仕事をして、2022年からニッセイ・キャピタルの社長になりました。
今申した通り、当社は日本生命の子会社のVCです。親会社のお金を運用し、30年以上スタートアップ投資を手掛けており、総額は1,000億円を超えています。金融機関系のVCはいくつかありますが、我々が特徴的なのはかなりアグレッシブに投資をしている点です。ファンドのスローガンを「From Seeds to Exits」と掲げ、創業超初期の段階から投資をしていますが、これは金融機関系VCでは珍しいと思います。また案件の半数以上はリード投資家として入り、大株主として起業家を支援しています。
これができるのは、当社の組織の仕組みにあります。多くの金融機関系VCでは親会社からの出向者が投資担当をしており、人事異動に伴って数年で親会社に戻ってしまうケースがあると思います。我々は独立系VCと同じように、キャピタル専属で採用、育成して投資担当として関わってもらいます。インターンから新卒で入ったメンバーもいます。今日の参加者でVCに興味がある方は、自分が働く可能性もある場所とご認識いただけるとありがたいなと思います。
廣澤:関西学院大学に進みまして、学生時代からVCになりたいという思いを持っていたんですけれども、なかなか関西でVCをしている人がいなくて。そういった中で仕事がしたいなというところで上京して前職のファンドで働き始め、新卒3年目の2018年に独立して自分でスタートしたのがTHE SEEDです。東京、大阪、京都の3エリアをメインに、基本的にはまだプロダクトがないような初期フェーズの企業をメインに投資活動を行っていて、現在、投資先数は50-60社ぐらいになってきています。
今回上田さんと登壇の機会をいただいたのも当社の投資先企業のリード投資家がニッセイ・キャピタルさんというご縁からです。以前上田さんとお話しした際に、もっと関西のスタートアップを盛り上げましょうと盛り上がり、今日に至ります。
■VCでのキャリア
中山:では1つ目のテーマ「VCでのキャリア」についてお聞きしていきたいと思いますが、参加者の中で疑問に思っている方もいるかもしれない「そもそもVCって何?」について、廣澤さんの方から簡単に説明していただけますか。
廣澤:最初にエクイティファイナンスについてご説明しますね。簡単にいうと会社の株式と交換にお金を企業が受け取れる仕組みのことです。VCのファンドというのはVCの代表が金持ちだからスタートできるとかではなく、多くの資金を持たれている方達が例えば2億円とかそういう単位の金額をファンドに対して投資をしてくれるところから始まります。会社からの場合も個人投資家から出資していただく場合もあります。VCは、こうして預かったお金をスタートアップ起業家のような方々に投資をする役割を担っています。
現在大体年間1兆円程のお金がスタートアップに入っている状態になっています。東京が7,000億円弱、関西圏が合算で500〜600億円程の金額です。最近話題になっている「スタートアップ育成5か年計画」は、この1兆円を10兆円に伸ばしていこう、スタートアップを盛り上げていこうという取り組みです。
中山:次に本題であるお二人のVCでのキャリアについてです。上田さんは最初からVCとして入社されたわけではないということですが、どのような経緯でVCにたどり着いたのでしょうか。
上田氏:私は小さい頃からお金周りに興味があって、大学でも国際金融などを勉強して就活の時は金融機関に行きたいと思っていました。生保は国内でもかなりの有数の機関投資家で総額80兆円くらい運用していたので、この仕事がしたいと思い日本生命に入社しました。今年で25年目になりますが、うち20年程は運用に携わるキャリアを歩んできて、上場株式、債券、不動産、証券、ローンなど様々なアセット投資を担当してきました。VCの直前は上場株の投資総括をやっていて、翌年からVCの仕事をしています。
色々な投資の仕事を経験してきましたが、今のスタートアップ投資がキャリアの中で一番面白いですね。特に魅力的なのは投資先企業との距離感が近いという点です。例えば上場株投資は誰でも買えるんです。でも実は株を買ったお金って直接投資先にそのまま入っていない、つまり本当の意味ではリスクマネーの供給になってないと思っています。
対してスタートアップだとまさに自分達が投資した5,000万とかのお金を使って、そこから一定期間事業運営をやっていき、VCはそれに伴走していく役割も担います。これこそリスクマネーの供給ですよね。投資家としてスタートアップと成長を共にしていくというやりがいもすごくあります。投資に興味を持っているという方には、スタートアップ投資は非常に面白い仕事だと思います。
中山:廣澤さんはいかがですか?
廣澤:大学3年生のタイミングで上京し、前職のファンドで住み込みで長期インターンとして働き始め、1年を経た大学卒業のタイミングで社員に切り替えてもらいそのまま働いて独立に至りました。
元から自分でファンドを作りたいという思いはぼんやりあったんです。3年目のタイミングになったのは同年代の起業家からの刺激ですね。自分で大きい金額を集めて社員を雇ったりプロダクト作って潰して、中にはものすごい当てたりしている人を横目で見ていた時に、1日の意思決定の総量が自分と全然違うと感じました。また当時はVCの一社員で、自分自身で預かったお金ではない中で、真剣にできている自信も持てなかったんです。同世代の起業家が日々重たい意思決定をしているのとどんどん差が開くのが目に見えて感じるようになって、今この瞬間に自分でVCを作って、自分の責任でお金を集めて投資することを始めないと、この起業家たちと5年後、10年後、一緒に仕事とかできないだろうなって危機感が募りました。
中山:ありがとうございます。次に、今日は学生の方がたくさんいらっしゃるので、学生時代に率先して積むべき経験について伺いたいと思います。
上田氏:最近はインターンもたくさんあるので興味ある業界で働くとか、とにかく人に会って話を聞くとか、自分の経験値を増やすことがすごく大事だと思います。
運用の仕事を20年位やってきてすごく感じるのは、結局、成功したり投資で勝ったりする可能性を高めるのは「いかに人と違うポイントを作るか」です。自分の強みをしっかり認識し、人と違うポイントを作ることが非常に重要です。特に投資というのは平均的なコンセンサス通りにしていたら絶対に勝てません。起業も同じですが、周りと同じことをしていると絶対に集団から抜きん出ることができないわけですね。同じ業界で同じようなチャレンジをする人に勝っていくためには、自分の勝負ポイントを見つけることがすごく重要です。
自分の強みを認識する、というと自己の中に深掘りしがちなんですがこれは逆で、他と比べないとわからないものです。
例えばニュース一つとってもこういう角度で報道するのか!とか自分の考えと違うというズレを自覚する。それを積み重ねていって、自分と世の中の平均値の違いがどこにあって、自分はどういう強みを出せるのかというのをしっかり作っていけるといいんじゃないかと思います。
中山:ありがとうございます。廣澤さんはどうですか?
廣澤:友達を作ることが何よりも後々効いてくると思っています。特に同年代の中ですごくやる気や意欲がある人と仲良くなった方がいいですよ。例えば今日隣に座っている今は何者でもない学生同士が、5年後、10年後「あの時いたあいつ、めちゃくちゃ成功してるな」と感じる瞬間がくるかもしれない。
例えば僕のケースでいうと、大学1年生の時に同じ授業に出ていた友人は今、3つ目の会社を創業していて前の会社は上場企業に買収されています。さらに、今では僕らも投資させてもらっていています。15年来の関係になりますが徐々に一緒にできる仕事の幅も広がっています。
中山:今日もまさしくそういう可能性があるということですね!さて、次の質問は、うまくいかない時の心持ちを教えていただけますか。
上田氏:VC投資ではうまくいかないことの方が当たり前なので、それによってお先真っ暗と落ち込んだりすることはありません。逆に失敗からいかに学ぶかということはすごく重要だと日々感じています。失敗したことを次に生かして成功確率を高めていかないといけないので、同じ失敗を繰り返さないように何ができるんだろうと、常に学びを続けていかなきゃいけないなというのはあります。
私自身のキャリアの中ではすごく一番大変だったなと思ったのは、リーマンショックの頃です。当時ニューヨークに駐在していてまさにリーマンの隣のビルで働いていました。一番大変でしたが、その分すごく考え学びました。困ったことがあった時には過去を振り返るんじゃなくて、未来に向けて何をするのか、切り替えて未来志向で考えることが大事だと思います。
中山:廣澤さん、いかがですか?
廣澤:僕は2015年位にこの業界に入って以来ずっと右肩上がりなので、そういう経験はあまりありません。一方で、もしかしたら今後リーマンショックと言われるような状況も起きるかもしれません。こうした経済的な危機やしぼんだ時にどう生き残るかというのは考えたいですね。
中山:事業がうまくいっていない投資先とはどう向き合っていますか。
廣澤:スタートアップで創業初期に2,000万円資金調達しました!となったら、一般的にはかなり大きなお金を人生で初めて預かることになります。こういう時って一瞬気が緩みます。でもそこから採用してオフィスを借りて事業を始めると余裕で月に数百万円かかってきて、もう翌年とかには存続できなくなります。
なのでこういう現実の話をきちんとした上で、何をしないといけないのかという資金繰りについて早い段階から一緒に考えるようにしています。
中山:ありがとうございます。次に2つ目のトークテーマ「資金調達について」。起業家の方が陥りがちなミスや気をつけるべきポイントを伺いたいです。
上田氏:一番は気軽に調達しないほうがいいということです。特にVCからのエクイティ調達は不可逆性があります。今は若い起業家のチャレンジを後押しするムードが高まっていますし、学生が熱意を持って出資してくださいと言って回ったら、出資してもらえる可能性は低くないと思います。そしていざ大金が調達できた時に、さて何やろう?という段階であれば、絶対に調達しないほうがいいです。何をやりたいか、やらなきゃいけないか、どれだけのお金がかかり、どれだけの成果が出せるのか、しっかり計画を立てて明確にしてから調達をすべきです。
VCからの調達というのは、ある種短期間で絶対に事業を成長させなくてはいけないという制約を課すことになるんです。基本的にVCには10年満期の中で投資を回収しなきゃいけないというルールがあるので、コツコツ利益をつくってのんびり事業をやっていくということは基本許されないし、最短期間で上場を目指すというゲームに乗らないといけなくなります。
これは業界のやや悪い面があるので今後変わるかもしれませんが、今のところ基本的にはこれが現実です。とにかく焦って調達しないことだと思います。
廣澤:全く同じことを思っていました。僕なりの言葉にすると、出資してもらう側だと思わないほうがいいですね。それが一番のリスクだと思います。むしろ出資させてあげてる、こちらが出資者を選んでいるくらいのつもりの方がいい。そう思えないぐらいの解像度でやるならやめたほうがいいと思いますね。あとは頼み込むような構図になっている時点で、エクイティファイナンスには触れない方がいいと思います。
逆に学生起業でスタートアップがある種当たり前になってきているからこそ、創業1年目の過ごし方について真剣に改めて考えた方がいい時代になったと個人的には思います。
中山:最後に起業やVCを目指す学生に向けて一言いただけますか。
上田氏:起業家にとって一番大事なのは、とにかく尽きることのない情熱です。事業計画がどうとか、マーケットが大きい小さいとかはもちろん検討はするんですが、結局しんどいことがあっても必ずやり遂げてやるという情熱がないと、何もうまくいかないと思います。
どんな起業家に投資したいですか?という質問に、すごく子供っぽいんですけれど、わくわくする起業家に、といつも言っています。
この人ならでかいことをやり遂げてくれるだろうな、世の中を変えられるんじゃないかって、理屈じゃなく思わせてくれるかどうかというのをすごく大事にしています。何となく机上で考えて調達するかぐらいの情熱のうちは、動かないほうがいい。これをやり遂げるという熱いものが固まってきたら動き出せばいいと思います。
そうなると仲間もお金も自然と集まってくるでしょうし、やめない限り失敗にはなりません。何か困難なことがあっても、成功に向かってチャレンジをし続ければ何かが起きるんじゃないかと思うので、ぜひ熱い情熱で世の中を変えてやるという気持ちで頑張っていただきたいなと思います。
廣澤:最近、VCになるためにどんなスキルが必要ですか?と聞かれますが、僕はスキルが過大評価されていると思います。そして情熱が過小評価されている。何よりも情熱があることが大事。
一方、成功方法みたいなものに再現性がある部分というのは確かにあります。なのでそのノウハウに対しては、高い情熱を持ちつつ辿り着くような努力をしたら良いと思います。
中山:このセッションはこれで終わりとなります。ありがとうございました!
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■「スタートアップ関西」について
2018年に創設した「スタートアップ関西」は、関西の学生が、スタートアップ・起業に触れる入り口を作るためのコミュニティです。起業家やVCとの接点や、スタートアップに関心のある同世代が情報共有できるコミュニティを作ることで、起業やスタートアップを目指す学生の若い才能を後押しします。
よくある質問
VC キャリア なるには
VCキャリアへの入り方は、新卒でVCに入社する方法、コンサル・投資銀行・事業会社を経て転職する方法、自ら起業経験を経てVCに転じる方法があります。近年は若手キャピタリストの採用も増えています。投資先の成長支援ができるスキルと、起業家への共感力が重要視されます。
VC 資金調達 聞いてはいけないこと
VCへの資金調達でタブーとされるのは、競合VCの条件を引き合いに出す交渉、事業の課題やリスクを隠すこと、根拠のない楽観的な数字の提示です。むしろVCが歓迎するのは、課題を率直に共有し一緒に解決策を考える姿勢です。VCとの信頼関係は正直なコミュニケーションから始まります。
ニッセイキャピタル 投資 特徴
ニッセイ・キャピタルは日本生命の子会社として、シードからレイターまで幅広いステージに投資するVCです。親会社のネットワークを活かした事業支援が特徴で、保険・金融・ヘルスケア領域に強みを持ちます。長期的な視点での投資スタンスと、起業家に寄り添う支援姿勢で知られています。
