関西の起業家に投資するVCが語る、資金調達の方法とは?「スタートアップ関西2024」(2/2)


「関西の起業家にとって、VCの考え方や投資判断の裏側を知ることは、資金調達の成功確率を大きく左右します。東京だけでなく関西にも投資するVCが増えている今、情報のアップデートが重要です。」
関西で投資するVCが語る資金調達の方法について、マネックスベンチャーズ代表の和田誠一郎氏とTHE SEED廣澤太紀が対談。起業家が持つべきマインドセットや資金調達で意識すべきこと、関西エリアの投資環境について議論しました。スタートアップ関西2024での第2セッションのレポートです。
シードVC「THE SEED」は、2024年4月27日に「スタートアップ関西」を開催しました。
東京に次ぐ学生人口が多い関西圏で、スタートアップに触れる機会を創出し、 先輩起業家やベンチャーキャピタリスト(VC)、同世代の学生が集う「スタートアップ関西」。
本記事は、第一弾の記事に続き、2つ目のセッションについてまとめております。
マネックスベンチャーズ 代表取締役の和田 誠一郎氏とTHE SEED General Partnerの廣澤 太紀が登壇し、「関西の起業家に投資するVCが語る、資金調達の方法とは?」をテーマに、起業家が持つべきマインドセットや資金調達で意識することについてのディスカッションが行われました。
関西はもちろん、全国の起業に興味がある学生の方は、ぜひご覧ください。
【登壇者】
・和田 誠一郎氏(マネックスベンチャーズ 代表取締役)
・廣澤 太紀(THE SEED General Partner)
普段からやっていることは10年後、20年後につながってくる
廣澤:はじめに、和田さんのご経歴を簡単にお話しいただけますでしょうか?
和田氏(以下、敬称略):私は、新卒で5人程度の小さなベンチャー企業に入社し、約2年間、営業を担当していました。そこでは、“ビル倒し”という営業手法を用い、自分の担当エリア内のビルを上から下まで全て飛び込み営業するという形で営業をしていました
その後、ニコニコ動画などを展開するドワンゴのグループ会社へ転職し、子会社上場準備などを担当していました。そして現在のマネックスグループに転職し、海外の子会社の管理担当などを務めていました。2014年に社内の人事異動を経て、マネックスベンチャー立ち上げに携わり、それ以来投資の仕事を続けています。
廣澤:数人規模のベンチャー企業や事業会社を経験し、そこからどうして投資家になったのでしょうか?
和田氏:結局のところ、「自分が投資家をやりたかった」に尽きると思います。私は人と同じことをするのが好きではなく、「新しいことにチャレンジする」というアイデンティティを持っていたので、マネックスが新しくVC事業を立ち上げる際に参画しました。
私が当時のマネックスの中でも異質だったのは、金融以外のベンチャーや人材業界、コンテンツ業界など、さまざまなキャリアを歩んできたことです。
マネックスで働く人は銀行や証券、保険といった金融業界のバックグラウンドを持っていることがほとんどでした。それに対して、私は組織の小さいベンチャーと上場企業の両方で勤務経験があり、それが投資家としての特徴の一つになっています。
廣澤:THE SEEDと同様に、マネックスベンチャーズも「事業会社や金融機関の方々からお金を預かって投資する」という形態になっていますが、資金の調達についてはどのようにされているのでしょうか。
和田:親会社のマネックスグループから、いちLP投資家としてファンドへ投資してもらっていますが、それ以外は自分で投資家を募り、営業に行って、資金を獲得してくるという形になります。
そういう意味では、1社目の“ビル倒し営業”が少なからず活きていると感じています。意外と昔に経験したことが10年後、20年後につながってくるんですよ。
創業期の資金調達方法は事業で成し遂げたい「夢」を語ること
廣澤:資金調達の方法について、融資との違いや出資するまでの流れについて教えていただきたいです。
和田:やりたい事業があったときに、前提として、未来のことは誰もわかりません。
つまりその時点においては、将来起こることに対する不確実性が高い状態なわけです。
その不確実性をどこまで許容し、お金を提供するかどうかについては、銀行であれば融資、VCであれば出資という形で判断していることになります。
銀行の場合、お金の出所は預金から発生しているもので、預かっている顧客に返さなくてはなりません。そのため、銀行は物事の不確実性を嫌います。
ストレートに言うと、確実なものだけにお金を貸したいという意志が強いのが特徴です。
ですので、今後みなさんが事業をやりたいからと、まず銀行に行ったとしてもすぐにお金を借りることはなかなか難しいのです。
一方、VCは不確実なものに投資して、それが大きくなったときのリターンで利益を得る事業体です。
「ハイリスク・ハイリターン」にベットしている以上、極論言えば「将来ゼロになっていもいい」というスタンスで、0→100になる事業を探しています。要は、銀行とVCでは行動原理が全く異なるわけです。
例えると、銀行は1万円が2万円に確実になる事業にお金を貸し、VCはハイリスクであっても1万円が100万円になるような大きな成長が期待ができる事業にお金を出資すると言えるでしょう。
事業立ち上げのタイミングにおいては、根拠を持って将来の確実性を表現するのが難しいフェーズなので、「事業が成立したら社会がどのように変わるのか」という“夢”を語ることが、エクイティファイナンスで重要になります。
廣澤:和田さんが投資してきた中でのベストケースや良い事例があれば教えていただけますか。
和田:起業家と一番最初に話した際の内容の良し悪しは、あまり考えていないですね。
私の場合、1回目にお会いした後に宿題っぽいものを出すので、1〜2週間後の回答によって、その人の物事における見方や考え方、解像度の差分を見るようにしています。
宿題前後での成長差分を認識できれば、極論どんな事業であっても、将来にわたって難しい局面を乗り越えようとする気概があるかがある程度備わっていると判断できます。そこを、起業家とのやりとりのなかでチェックするようにしています。
もう一つ言えるのは、投資判断において人がものごとを評価するため、「絶対評価」だけではなく「相対評価」になることも多い、ということです。その瞬間では駄目だったとしても、1週間後に同じような話をしたときに印象が変わることって、結構あると思うんですよ。そういうマインドを持ち、「常にVCヘアタックし続けられるか」というのも資金調達を決める上では大事な要素になりますね。
義務を果たそうとせずに、自分の思いに100%忠実でいること
廣澤:僕がシードVCの仕事を好きな理由の一つに、「ペイ・フォワード」の考え方があります。一度起業で成功した先輩たちが、次の世代へ成功哲学やノウハウを共有していくもので、これをTHE SEEDでやりたいと思っています。
そんななか、起業家にとって投資家から資金を受け取った際に「果たすべき責任」というのは、どのようなものがあるとお考えですか。
和田:VCは将来の不確実性を許容し、未来に賭ける仕事だと考えています。そこには取れるリスクの範囲がそれぞれあり、得たいリターンのイメージがそれぞれ存在します。よって、起業家はVCが望んでいるリターンを事業の成長によって実現しなければならないという「義務感」を持つ必要はありません。
企業価値を1000万円から1億円にするというのは、あくまでVC側の都合であって、起業家はそのために事業をするのではないわけです。自分のやりたいこと、社会を良くしようという思いを持ち、事業に取り組んでいる以上、まずはその思いに100%正直でいてほしいと私は考えています。
事業で目指すあり方、目標を実現させるために努力し続け、常にフルスイングしていくことが、ひいては投資家から預かった資金に対する責任を果たすことになると考えています。投資に対するリターンを出すことも大事かもしれませんが、それ以上に大切なことがあるということを忘れないでほしいと思います。
誰かのために、自分の思いやこだわりを犠牲にして、義務感を果たそうとするのは、自分の長い人生にとってむしろマイナスになってしまいます。
そういう意味では長い人生の中で、やろうと思って決めた挑戦に対して、「やりきったのかどうか」は非常に重要なことです。
廣澤:どういう場面でやりきったと感じるのでしょうか。何か判断軸などがあれば伺いたいです。
和田:もちろん、何も苦労しない方がいいわけですが、目の前にあることだけにあくせくするのではなく、「一歩先にあるものを見据えた上で苦労できるかどうか」が問われていると思うんです。
日々、一生懸命に事業と向き合い、もがいているか。
基本的な取り組みスタンスですが、この姿勢を貫くことが重要です。
私が思うに、客観的に見れば事業がうまくいってそうでも、起業家本人は満足していないという具合が良い状態だと思っています。常に課題がある、困っている、悩んでいるといった状態が続いているのは、事業と真剣に向き合い、やりきっているのを表す一つの指標になると言えるでしょう。
起業家との面談や会食をしてコミュニケーションを取るときは、そういう部分をチェックするようにしていますね。人間関係やお金、プライベートのことなど、人生にはいろんな悩みがつきものですが、常に自発的な行動を起こし、「壁にぶち当たりにいっているかどうか」を見るようにしています。
廣澤:和田さんのお話を聞いていて、主観的な判断だけではわからないことが多いなと感じました。僕も当初から言っていることですが、「同年代で信頼できる友人を持つ」のはすごく大事なことだと思うんです。
起業して同じようにファイナンスを受けた友人が周囲にいると、自分がやりきったかどうかを客観的に見てもらうことができます。それは投資家相手でもできるので、そういう繋がりも活かしてほしいです。
やりたい気持ちを忘れずに挑戦し続けることの大切さ
廣澤:最後に学生の皆さんにメッセージをお願いします。
和田:私から伝えたいのは「やりたいという気持ちを忘れないこと」です。
人によって、起業に対しての考えや思いが漠然としていたり、あるいは確固たる自信があったりと温度感は異なるでしょう。
でも、何かをやりたいという気持ちを持っただけでも、それは素晴らしいことで、誇りに思っていいんです。そこから少しずつでいいので、自分の思いを身近な人に伝えていく。行動を続けていくと、肯定的な意見ばかりではなく、ときには批判もされると思います。その度に自分の気持ちを確認して、揺るぎのないものにしていってほしいです。
事業を創ること、起業することは大変であり、それだけ尊くかつ誇り高きものだと捉えています。
だからこそ、自分と同じ価値観や思いを持った仲間を、直接的でも間接的でも構わないので増やしていくことも大事になります。
そして、何より挑戦し続けること。自分のプライドを持って、芯をぶらさずに一歩ずつ前に進んでいってほしいです。
一緒に良い社会を作って、良い日本にしていきましょう。
■「スタートアップ関西」について
2018年に創設した「スタートアップ関西」は、関西の学生が、スタートアップ・起業に触れる入り口を作るためのコミュニティです。起業家やVCとの接点や、スタートアップに関心のある同世代が情報共有できるコミュニティを作ることで、起業やスタートアップを目指す学生の若い才能を後押しします。
よくある質問
関西 VC 資金調達 方法
関西での資金調達は、関西拠点・関西投資実績のあるVCへのアプローチ、エンジェル投資家ネットワークの活用、公的支援機関(大阪産業局等)経由のマッチングが主な方法です。近年は東京のVCも関西に注目しており、スタートアップ関西のようなイベントでのVC接点も増えています。
マネックスベンチャーズ 投資 特徴
マネックスベンチャーズはマネックスグループのCVCとして、フィンテックを中心に幅広い領域のスタートアップに投資しています。金融グループの知見とネットワークを活かした事業支援が特徴で、関西の起業家への投資実績もあります。シードからアーリーステージを中心に投資を行っています。
起業家 マインドセット 資金調達
資金調達で重要なマインドセットは、VCを単なる資金提供者ではなくパートナーとして捉えること、断られても改善して次に向かう粘り強さ、自社の強みと課題を率直に伝える誠実さです。事業の将来像を具体的に語れる準備と、投資家の質問に対する深い理解が信頼構築につながります。
